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2004/10/09

私とオウム真理教

麻原彰晃逮捕されて、早くも9年余り。

求心力を失ったことで、衰退に向かうと思っていたが、再びここに来て復活の
動きがある。

「ケロヨンクラブ」と称するオウム真理教分派が、女性信者を修行中に死亡さ
せるというニュースを見て、同じように思った人も多いのではないか。

私は今まで、オウム真理教と2回ほど直接関わったことがある。

最初は、1989年

当時、大学生だった私は、音楽サークルに所属し、バンドを組んでいた。
大学祭の出演待ちの間、キーボードのTといっしょに模擬店巡りをしていた。
快晴で来客も多く、店はどこも人で賑わう。

途中、見慣れない白装束の集団を見かける。
いぶかしげに彼らを横目に見ながら、限られた時間の中、私たちは先を急いだ。

その途中、超心理学研究会が主催している研究展示を見つけた。
超能力UFOなど、超自然現象に興味のあった私とTは、迷うことなく足を
踏み入れた。

先ほどの白装束の一団と同じ格好をした一人の女性がにこやかに近づいて来る。

「よろしかったら、ご説明しましょうか?」

素直にその申し出を受け、彼女の説明を聞いた。

「人間は訓練することで体力の消費を極限まで落とすことが出来るんです。
これは、それを証明したグラフです。」

白い模造紙で書かれた酸素消費量や脈拍などの推移を示す線が、描かれて
いる。

彼らは、被験者を水中に潜らせて、この数値を計測したらしい。

ヨガにもそんな修行があることを思い出し、

「そういうことも出来るのかも知れない。」

と、うなずきながら、次へ。

ハープのような楽器の演奏がかかるCDプレイヤーがある。
その前には、カセットテープが並べてある。
音楽をやっている我々には、興味深い展示である。
特に当時のTは、エスニック音楽など、珍しい音楽にハマっていたので、ジッと
凝視していた。

彼女の説明が始まる。

「この音楽は、天上界の音楽なんです。」

「え?」

と驚く我々。

「精神を集中することで、人の魂は肉体を離脱し、天上界へ行くことが出来ます。
相当精神修行をしないと身につけることの出来ない能力ですが、我々の中で
それが出来る者がいて、聴いてきたものを再現したのが、これなんです。」

「これがですか...」

と耳を澄まして聴く私たちに、彼女は、

「ご興味がありますか?」

と問う。

「ええ、僕たち音楽やっているから、すごく興味があるんですよ。」

それを聞くと、こういう解説をしてくれた。

「天上界の音楽には、ベースの音が無いんです。」

「ベース音が無い?!」

「ええ、ギターで言えば、6弦、5弦、4弦の音がありませんし、ベースの音も
存在しません。

これらの音は、邪悪な心をかき立てる働きがあるんです。」

「え、そうなんですか?」

「そうです。だから、ハードロックなど頽廃的な音楽になればなるほど、これら
の音が強調されています。
あれは、悪魔の音楽なんです。」

(デーモン小暮閣下みたいなことを言う。)

とりあえず、もっと聴いてみたかったので、

「ちなみにこのカセットテープは、売っているんですか?」

と尋ねてみた。

「はい。1本3,000円です。」

LPレコードが2,800円で、出て間もないCDが3,200~3,500円の時代
である。
興味はあったが、貧乏学生には「前衛音楽」に3,000円は払えない。
やむなく断念した。

さらに次の展示へ。

プラスチックの容器に入った水と泥のついた野菜が並ぶ。

「これは...」

と尋ねると、

「今の世の中は、薬品や様々な汚染であふれています。
精神修行には、汚染されたものは害になります。

(そういうこともあるかも知れないな。)
フムフムと聞く我々に視線を送りつつ、彼女はこう続ける。

「これは浄化した水と野菜です。
水は、修行によって浄化能力を身につけた者が、エネルギーを送って浄化した
ものです。
そして、この野菜は、浄化させた土壌に、この浄化した水で育てたものです。」

「じゃあ、みなさんも...」

と私が問いかけると、

「はい、もちろんです。毎日、これを食べたり、飲んだりしてますよ。
浄化したものを摂取することで、体から汚染物質を減らすことが出来ますし、
頭がすっきりして、集中力も増します。

「では、普通、スーパーなどで売っているものはダメなんですか?」

と聞く私。

「ダメですね。今、食べたら体が変になります。」

(?)

「もし、学祭で売っている焼きそばやお好み焼きを食べたらどうなります?」

彼女は表情をこわばらせ

とんでもない!そんなものを口にしたら、死んでしまいます!

と体全体で拒否の態度。

(??)

「では、当然、ここにいるみなさんも同じですか?」

と白装束の方々を見ながら、確認をすると、

「ええ、そうです。」

キッパリ言い切る彼女。


ちょっと待て!

私は、その30分前に彼らが、模擬店で焼きそばやお好み焼きをパクつき
ながら学内を歩き回る姿を目撃しているのである。


生きてるじゃん!

思いっきり元気じゃん!!


どこかソースくさいし。

内心呆れ果てながら、会場を後にした。

後日、白装束の彼らがオウム真理教であることを知った。

この事件の記憶があったので、その後に起こるオウム関連ニュースを見る度
に、

「何であんなデタラメな団体にひっかかるのか?」

不思議に思ったものである。


2回目は、1991年。

社会人になっていた私は、休日、神保町の古本屋街を歩いていた。

岩波ホールの前の歩道に、見覚えのある白装束の女性がビラを配っている。

前述のエピソードがあったので、冷やかし半分に話を聞きに行った。

「立ち話もなんですから...」

と近くの喫茶店に。

渡された名刺には、

「オウム真理教 広報部 N村」

と書かれていた。(裏面には、「大乗の教え」云々が書いてある)

彼女は、オウムの教義について、終末思想を絡めながら一生懸命説明して
くれた。

笑いそうになるのを我慢しながら、1時間。

いい加減聞くのも疲れたので、

「次があるので...」

と切り出した。

すると、彼女は、

「では、これを見てください。
もし、疑問があったり、興味があったら、連絡してください。
来週もここにいるので、その時に声をかけていただいても結構ですから。」

と、ひと抱えもあるオウムの本とビデオをくれた。

会社の寮まで持って帰るのは、正直大変だった。

部屋に戻って、友人とビデオ鑑賞会。
「朝まで生テレビ」の麻原彰晃出演の回と、尊師アニメ、説法が収録されて
いた。
その荒唐無稽な内容は、退屈に飽きた我々にとって、良い娯楽であった。

さらにオウム本の読書会。
時々、クスクスと笑い声が。

・瞬間移動をする尊師
 (テレポーテーションの話ですね)

・雨に濡れないので、傘が要らない尊師の話
 (「雨が尊師を避けるから濡れない」なんてことが、イラスト入りでマジメに
語られています)

・分身の術を使う尊師
 (同じ時刻にいろんなところに現れます)

等々。

引っ越す時にこれらは散逸したり、捨てたりで今は手元に残っていない。
今思えば捨ててしまったのが、惜しいくらいネタ満載本だった。

やはり、この時の友人たち共通の感想は、

「どうして、こういうものにハマるのか理解出来ない。」

というものであった。


しかし、世の中、そういうものにすがってしまう人もいるのである。

私の地元 九州で、実家の近所に住む弟の友人M君がオウムがらみのトラブル
で亡くなった。

子供の頃、M君は弟を訪ねて自宅によく遊びに来ていた。
コロコロとした体格に丸い顔。
人懐っこい笑顔が印象的だった。
その姿が記憶にあるだけにショックであった。

もし、前述の話をM君に話していたら、彼は死なずに済んだのかも知れない。

そう思うと、悔やまれてならない。

今回、こうした話を書いたのは、トンデモ話を書くのがメインではない。

「ケロヨンクラブ」のニュースを耳にして、オウムの残党が息を吹き返す前に、その実態の一端
でも知っていただいて、第二第三のM君が生まれないことを願ってのことである。

少しでもこれが罪滅ぼしになればいいのだが...

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