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2004/12/12

モンチッチの「散髪」

モンチッチのアルバムが発売されるらしい。

「みんなのアイドル“モンチッチ”のアルバム 一般販売開始!」

モンチッチと言えば、ぬいぐるみメーカーのセキグチが、
1974年に発売、大ヒットとなったぬいぐるみである。

モンチッチ―くものうえのもりのひみつ
(モンチッチ)

発売当時は、入手も難しく、父親が妹にねだられて困って
いたのをよく覚えている。

さて、それから時を経ること約4半世紀

私は、セキグチと一緒にお仕事をすることになった。

当時、勤めていた会社が出したキャラクターのぬいぐるみ
をセキグチに出してもらっていたのだが、あまり芳しい売れ
行きではなかった。

ライセンス料の報告をいただいた時、

「すみません、キャラクターの力が弱くて。
私どももプロモーションでお役に立てず...」

と恐縮する私に、

セキグチのK部長(この業界では有名な方です。)は、

「いいえ、いいんですよ。
ホンモノのキャラクターが育つのには、時間がかかります
から。

うちがやってるディック・ブルーナミッフィ(日本では
「うさこちゃん」の名前でも知られる)なんかも、商売に
なるまで20年かかりましたからね。

ちいさなうさこちゃん

一度信じたキャラクターは、とことん信じるのが、ウチのやり
方です。

だから、気にしないでください。

ま、気長にやりましょうよ。」

と、ずいぶん慰めていただいたものである。

最終的には、私が勤めていた会社が、キャラクターやコンテンツ
ビジネスから撤退することで、終わりを告げることになったのだが、
セキグチは、それまで信義を貫いてお付き合いしてくれた。

経費などを考えると相当な赤字であるにもかかわらず。

このように信じたキャラクターに対する愛情もハンパではない
ありませんが、セキグチのぬいぐるみに関するこだわりはハンパ
ではなかった。

それは、それまで「ぬいぐるみなんてどれも同じ」と思っていた認
識を変えるものだった。

セキグチのK部長の話によると、セキグチのポリシーは、

・まずイメージを壊さないこと。

・オリジナルキャラクターのイメージが再現できるまで妥協しない。

・赤ちゃんや幼児が使っても、安全なように「毛が抜けない」よう、
素材や製法に留意して作る。(口にくわえたり、なめたりしても
大丈夫なように)

と、いうことである。

確かに、何度も何度も見本品が届きチェックをした気がした。

こちらが、

「これくらいでいいのでは?」

と言っても、

「もう少しがんばってみますから。
あと少しでイメージに近づけるんです。」

といった具合だった。

出来上がった「作品」は、どれも素晴しい出来だった。

キャラクターのイメージを上手に再現していたし、量産品も
縫製や材質は丁寧でしっかりしていたものであった。

そこで、量産品が出来た後の打ち合わせの時に、

「セキグチさんは、昔からこんな感じで作っていたんでよね?

実家にあるモンチッチも20年以上経ちますけど、本当に作り
がしっかりしてますよ。

今でも型崩れしていません。」

というような話をした。

すると、K部長は、

「ええ、そうなんです。

モンチッチ最初は、国内生産だったのですが、途中から中国
で作るようになりました。

その時も、細心の注意を払って、国内と違わぬクォリティのもの
が、出来るようになったんです。」

と、ここまでは、フツーの話。

企業であれば、国内も国外も同じクォリティで生産するのは、ある
意味当然と言えば当然である。

問題は、ここからである。

ウチ(セキグチ)は、中国と香港に拠点があって、中国で生産した
モンチッチを、香港でチェックして、日本に送っていたんです。

日本に届いたモンチッチの最終チェックを我々がやって、合格して
はじめてお店に出るようになっているんです。」

(すごく念入りなチェックをされているんですね。)

「ええ、時には社長自らチェックをすることもあります。」

(社長さんも?)

「ええ、本当にこだわりのある人ですから。

そういえば、こんなこともありました。

中国での生産が始まってしばらく経った日のこと、

香港でチェックされた、モンチッチを見た社長が、

『なんだ!これは!?』

と、怒るんです。」

(何か不具合でも?)

「いいえ、質には全く問題ありませんでした。

我々も、社長が何に怒っているのかわからなかったんですよ。」

(では、それは何だったんですか?)

「だから聞いてみたんです、

『社長、何がおかしいんですか?』

って。

すると、

『このモンチッチのモミアゲはなんだ!
長すぎるじゃないか!』

と言うんです。」

(そんなに目立って長かったんですか?」

「いいえ。
心もち、ちょっと長いかな?って感じでした。

その後、社長が、

『おい、誰かハサミ持って来い!』

Henckels クールカットプラス 料理バサミ

と言うんです。

クォリティにこだわる社長のことだから、切り刻むと思いきや...

(違ったんですか?)

「ええ。
そのハサミで、社長は、モンチッチのモミアゲをチョッキンチョッキン
やり始めたんです。

あっけにとられていると、

『おい!お前ら何、そこでボーってしてる。
早くやらないか!』

と怒られて、やりましたよ。

モンチッチの散髪を。

社員がそろって、一体一体のモミアゲをチョッキンチョッキンと。」

なんともすごいエピソードである。

そのこだわりが、今に続く人気の秘密なのであろう。

当時、セキグチに作っていただいたぬいぐるみが一つ我が家にも
ある。

長男の過酷な使用にも耐えて、いまだにくたびれた様子はない。
この薄汚れたぬいぐるみを見る度にキャラクターの有名・無名を問
わずにきっちりと作っているセキグチのクラフトマンシップを感じる。

このような安心して買い与えることのできる商品が少ないだけに、
セキグチには、ぜひがんばって欲しいものである。

やはり、ホンモノは気持ちいいし、カッコいい。

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