誰もいないのに聞こえる謎の声
事務所で仕事をしていると、左の方から30代後半から40代くらいの男性の話し声が聞こえて来た。
今日は、隣の席には誰もいないし、その向こうの窓側には打ち合わせスペースがあるが、そこにも人の姿はない。
そもそも声が聞こえて来るのは、もっと上の方からである。
館内放送用のスピーカーにどこからか強力な電波が入ったのか、ダクトが伝声管の役割をして、他のフロアの音を拾っているのかと思ったが、スピーカーは全く違う場所にあるし、ダクトがこんな場所にあるのもおかしい。
耳を澄ますと、声は、何も無い空間から聞こえて来る。
穴の中でつぶやいているように響くので何を話しているのか、よく聞き取れない。
「…は、どうする…」
「もう…」
「…だ」
文頭と文末、接続詞的なものしかわからない。
というよりは、聞き取るのが恐い。
変な汗が出て、気持ち悪いまま、昼休みに入る。
雨が降っていたが、外に出かけずにはいられなかった。
午後に入ると、今度は女性の声が同じ空間から聞こえる。
さすがにここまで来ると、耐えられないので、周りの同僚に、
「この辺から何か聞こえないか?」
と訊ねてみるが、誰にも聞こえないらしい。
あまりにも耳障りなので、耳栓の代わりヘッドホンをしてみるが、これはこれでうっとうしい。
夕方になると、あまり聞こえなくなった。
やれやれといった感じで、夜に昼間に積み残した分を片づけ始めてしばらくたった頃、今度は、もう少し若い男性の声が、あの空間から聞こえてくる。
誰もいないのに聞こえて来る謎の声。
一体、これは何なのか?
地震の前くらいから、何かがおかしい。
予知夢みたいにはっきりと未来に起こる出来事が見えたり、予知までには至らないが、後になるとつじつまが合ってしまう「虫の知らせ」的な不可解な行動や発言があったり。
このような不思議な出来事は、昔はよくあった。
自分と友人しかいない部屋で、しかも誰も映らないはずの鏡に全然知らない男が映っていたり、友人と寮の廊下を歩いていたら、足元を黒い雲のような生き物が走り抜けて、壁の中に消えていったり。
他には、カギがかかっている部屋のドアがスーッと自然に開いたこともあった。
ドアを確認すると、カギには異常がなく、しかも閂(かんぬき=カギを回すと出たり入ったりする金属の出っ張りです。)は出たまま。
この状態で物理的に開くのは不可能である。
その時、部屋にいた友人にも確認してもらったから間違いない。
こういう不可解な現象から、しばらく遠ざかっていたので、すっかり忘れていたのだが、また、このような経験をするとは思いもしなかった。
出来ることなら、全部「気のせい」だと思いたい。
それが出来れば、どんなに気持ちが楽になることか…
「何かを感じる」と、思ったことを口にしたら、気味悪がられるのは確実だ。
予言が出来るくらいなら使えるのだが、せいぜいキーワードが精一杯。
でも、浮かんだ人やものに対して、確実に何かが起こってしまっているからどうにも気味が悪い。
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