ふつう有限会社と言えば、個人商店など小規模な企業である。
最低資本金が、
・有限会社: 300万円
・株式会社:1,000万円
ということからも、会社の大きさだけだなく信用度も上である。
では、一番大きな有限会社とは、どれくらいの規模なのだろうか?
前職で市場調査のデータ分析をしていたら、このような企業名を見つけた。
エクソンモービル有限会社
見た瞬間、
「F1のスポンサーにもなっている世界的石油メジャーと同じ名前とは...」


(どちらも見たことありますよね?)
と思い、住所の項目をみると、あのエクソンモービルと同じ場所っぽい。
大企業じゃないと借りれないような場所の住所である。
「データ入力した人が、間違えたのか。」
と、念のため帝国データバンクのサービスで検索すると...
確かに「エクソンモービル有限会社」となっていた!!
プレスリリースを見ると、この辺の経緯がよくわかる。
■ エクソンモービル有限会社
・設 立 1961年
-エッソ石油(有)を存続会社とし、モービル石油(有)、エクソンモービルマーケティング(有)、エクソンモービルビジネスサービス(有)の合計4社が2002年6月1日に合併し、現社名に名称変更した。
・所 在 地 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワー
・社 長 G.W.プルーシング
・従業員数 1000名
・資 本 金 500億円
・社 員 エクソンモービルアジアインターナショナルSARL(100%)
・事業内容 各種石油製品及び関連製品の販売、管理統括部門の業務
エクソンもモービルもどちらも世界的大企業だが、日本法人は、いずれも有限会社だったようである。
1998年、親会社である米エクソンと米モービル両社の合併で、さらに巨大な有限会社になったというわけだ。
おそらく日本最大級の有限会社であることには間違いない。
しかし、資本金500億円の有限会社とは...
では、なぜ「有限会社」の形態をとっているのだろうか?
何か意味があるはずである。

(こういう本を読むと「株式会社の方がいい」みたいに書いていますよね?)
では、株式会社と有限会社のメリットとデメリットについて考えてみたい。
【有限会社】
《メリット》
・最低資本金:300万円
・出資者:有限責任
・取締役:1人でもOK
・役員任期:無期限
・設立当初2年間は通常消費税を納めなくてもよい。
・設立手続きが容易
・取締役会の開催が不要である。
(従って、定款の変更、役員の変更など設立後の手続など会社運営も楽。)
・貸借対照表や損益計算書の公告をする必要はない。
《デメリット》
・出資者:50名まで
・出資分の譲渡不可
・社会的信用度は株式会社に比べ低い 。
【株式会社】
《メリット》
・出資者数に制限はない。(広く出資者を募ることが可能)
・社会的信用が高い。
・出資者は有限責任
・株式の譲渡は原則自由
・法人税は定率課税
《デメリット》
・最低資本金:1,000万円
・取締役が3人以上、監査役が1人以上必要である。
・取締役会、株主総会を開催しなけらばならない。
・定期的に役員の改選と変更内容の登記が必要である。
・設立当初から消費税の課税事業者となる。
・決算期ごとに貸借対照表と損益計算書の公告が必要である。
これらを見ると、米エクソン・モービル社は、米国本社が日本法人を完全にコントロールしようとしているのではないか。
取締役が1人でもよく、しかも任期は無期限で、なおかつ取締役会を開く必要も貸借対照表や損益計算書の公告をする必要はないわけである。
つまり、極論すれば、経営に日本人の意志決定やチェックを介在させず、全て米国本社の意のままに動かすことも可能なのである。
エクソン・モービルは、アメリカの大富豪ロックフェラー家とのつながりの深い企業である。


(ちなみにシボレーやキャデラックを出している米国の自動車会社ゼネラル・モーターズ[GM]もロックフェラー系。)
ロックフェラー家は、石油王ジョン・ロックフェラーを祖とし、今でも米政財界に強い影響を及ぼしている。

(ロックフェラー=ユダヤ説もある)
例えば、昨年暮れのスマトラ島沖地震で大きな被害があった、インドネシアのアチェには、エクソン・モービルの天然ガス利権がある。
この事実を知れば、アメリカ政府の迅速な「救援」対応も理解できると思う。
以前から、アメリカ政府に影響力を持つ企業であったが、石油資本をバックにするブッシュ政権になってから、特にその傾向は強い。
ソビエト連邦亡き後、世界唯一のスーパーパワーとなったアメリカ。
その方針を左右するほどの力を持つ企業である。
それだけに、例え少しでも自らの意志を妨げるような要素は排除したいということが、有限会社という会社形態を選択させたのかも知れない。
日本一大きな有限会社の話題から、ちょっと深読みをし過ぎてしまったようだ。
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